暖かな雪



尖った風が耳を切る。


浅葱の空が灰雲に覆い尽くされていく。


流れゆく雲を止める術が無いように、時代もまた然り。
あったはずの俺の道は もう見えない。


だが・・・

ひらり・・・ひとひら・・・


凍えるような結晶さえも 羽毛の様に暖かく思えるのは
きっと、お前が傍に居てくれるからなのだろう。


過去を濯ぐように雪は世界を塗り替える。


全てを失くしてしまったわけではない。
たった ひとつ かけがえのないものがここに・・・
ならば、また作っていけばいい。


殺伐とした心に白き雪は降り積もる。
輝く明日を示唆するかのように・・・


長く厳しい冬は春にとっては必要な季節。


ならば、今は お前とふたり 寄り添って、
天から舞い散るこの欠片を静かに眺めていよう・・・